ホームランド シーズン8の感想

ホームランド シーズン8HOMELAND

同時代に放送されたアメリカの歴史的名作ドラマ、ブレイキング・バッド、マッドメン、そしてゲーム・オブ・スローンズをまとめて打ち破った、史上最高の海外ドラマ「ホームランド」が完結した。

とはいえ、ホームランドがブレイキング・バッドやゲーム・オブ・スローンズを上回っていたのはS1のみ。 だがあのS1があれば、ホームランドが歴史上最高のドラマだ。

この最終シーズンは、S1には及ばないが、シーズン2以降で最高の出来だったと思う。ラストシーンはドラマとしては最高といえる出来で、この作品らしく多くのことを考えさせられる終わり方でもあった。 ということで、今回はホームランド シーズン8の感想!

史上最高レベルのエミー賞を制したホームランドS1

ホームランドのシーズン1は2011年にアメリカで放送開始。すぐに人気となり、2012年のエミー賞にノミネートされた。だが2011年のアメリカドラマ界は間違いなく史上最高レベルの年で、この年(実際は翌年の2012)のエミー賞ノミネート作品は、エミー4連覇中のマッドメン、アメリカ中をTVにくぎ付けにしていたブレイキング・バッド(2013年から2連覇)、そして世界を席巻し始めたゲーム・オブ・スローンズ(ブレイキング・バッドの連覇の後、5年間に4回制覇)、そしてこのホームランドという、まさに銀河系レベルの戦いだった。

どの作品も、どの年にノミネートされても確実に作品賞を取れるレベル、そんな中で作品賞、主演男優賞、主演女優賞の3冠を達成したのがホームランドS1だ。もう今後ブレイキング・バッドとゲーム・オブ・スローンズを賞レースで打ち破れる作品は世に出ないのではないか? 誰もがそう思うような奇跡を起こしたドラマがこのホームランドS1。そんなホームランドもついにシーズン8をもって完結。

自分ももちろん8シーズンを完走。まあ正直、シーズン2以降でシーズン1レベルのものはなかったが、それでも全てのシーズンが十分に楽しめるレベルだったと思う。そしてこのシーズン8、個人的にはシーズン1を除けば最も面白かったシーズンと感じた。最高のスタートを切り最後をしっかりまとめたホームランド。そこにダミアン・ルイスの姿はなかったが、クレア・デインズが今回もチャンピオン級の演技を見せてくれた。そしてなんとなくホームランドらしくなかったラストシーンがとても良かったと思った。

ホームランドシーズン8のストーリー

シーズン7のラストでロシアに囚われたキャリー。そのキャリーがソールの尽力などが報われ(表向き)アメリカに帰国。帰国後、精神病院でのリハビリを終えたキャリーは、CIAのアドバイザーとして中東・アフガニスタン周辺国に関する助言を行う立場になる。だが当然CIAはキャリーの釈放の裏になにかあるかも?と信用はしていない。

常にロシアに寝返ったスパイと疑われながらも、キャリーは相変わらず自分のスタイルで捜査・調査を行う。そうしているうちにアメリカとタリバンは和平への道を探るようになる。アメリカは軍の撤退を視野にタリバンと交渉。CIAもソールが主導し、タリバンの指導者・ハッカニと交渉を行おうとする。だがタリバンとの交渉・米軍の撤退を良しとしないアフガニスタン副大統領のグロムや、パキスタン軍部などの妨害にあう。さらに、なぜかこの問題の裏で暗躍するロシアのスパイ・GRU=ロシア諜報局のエフゲニー・グロモフらの影も見え隠れする。

だが万難を排しアメリカとタリバンは和解、アメリカとアフガニスタン政府は和平交渉を始めるに至る。ところが両国の大統領が同乗したヘリがアフガニスタン山中のタリバン支配地域に墜落。すぐさまタリバンがヘリを撃墜したと犯行声明を出す。

両国大統領の死亡が確認され、米副大統領ヘイズが大統領に就任。対アフガニスタン強硬派であるヘイズは、補佐官として同じく強硬派の急先鋒として知られるゼイベルをつけアフガニスタンへの報復と、その裏にいるであろうパキスタンへの軍事攻撃を画策する。多くの米政府関係者やソール、キャリーは核保有国であるパキスタンへの軍事攻撃に強く反対する。だがゼイベルの助言にしか耳を貸さないヘイズは、パキスタンへの軍事侵攻の準備を進める。

その頃キャリーは、ヘリの墜落が実は単なる事故だった事を知る。この証拠を手にするためにフライトレコーダーを探す事に。キャリーがこのミッションを託したのは、キャリーをシーズン1から支えてきた盟友のマックス。マックスはなんとかフライトレコーダーを手に入れるが、アフガニスタンの武器商人に奪われ、拉致されてしまう。その後マックスの助けにCIAが動かないことに業を煮やしたキャリーは、ロシアGRUのグロモフに連絡をつけ、GRUの助けを得てマックスを捜索、同時にフライトレコーダー回収も目論む。

だが囚われていたマックスはタリバンにより射殺されてしまう。CIAがマックスを助けなかったことに激怒したキャリーは、その怒りをソールにぶつける。

GRUの協力でフライトレコーダーを入手するチャンスを得たキャリーだが、グロモフはそのためには一つどうしても必要な条件があると言う。なんでもロシアにはかなり昔から政府中枢に内通者がいるという。しかもその内通者はソールに通じていると。グロモフはフライトレコーダーを手に入れたいなら、その内通者をソールから聞き出せと、キャリーに条件をつける。マックスの件で揉めたこともあるが、それ以上にソールはロシアの内通者を頑なに守ろうとする。 その後なんとか内通者をあぶり出すことに成功したキャリーはそれをグロモフに伝え、代わりにフライトレコーダーを入手する段取りを付ける。

ところがグロモフに騙されフライトレコーダーはロシアの手に。詰め寄るキャリーに対しグロモフは、「作戦だからどうしようもない、同じスパイとして理解できるだろ!」と諭す。その後ロシアは墜落が事故だったとフライトレコーダーを証拠に世界に向け会見を行う。さらに米・アフガニスタン、パキスタンに対し、ロシア主導での和平を提案し、世界にその存在感を見せつける事に成功する。

パキスタンとの軍事衝突を回避したキャリーだが、グロモフ(GRU)と行動を共にしていたことで、キャリーはアメリカ(CIA)からロシアのスパイと認定されてしまう。さらに内通者の名前を聞きだすために、イスラエルにいるソールの姉を騙した事で、イスラエル軍・モサドにも追われる立場になる。イスラエルから脱出するため、キャリーは意を決してグロモフとその後も行動をともにする・・

その数年後、キャリーは祖国アメリカを捨てロシアに亡命していた。モスクワで豪華な暮らしをしているキャリー。だが実はキャリーの忠誠心は今もアメリカにあり・・・・

シーズン8の感想

この最終シーズンのストーリーは、かなり考えられたものだとすぐに気がつくし、ラストシーンの後味がとても良いものだったので全体的な満足度はかなり高かった。さらにこのドラマに絶対にありえないはずのハッピーエンドまで成功させた。この構成は本当によく練られていて心から感心した。

もちろんこの後のストーリーを想像すれば、キャリーはベッドで死ぬことないだろうし、それほど長生きも出来ないだろうという感じはする。しかしこの生き方。キャリーのことを、ずっと女ジャック・バウアーだと思っていたが、もうそれ以上だ。

アメリカに尽くした元CIA諜報員キャリー・マディソンは祖国のために、ブロディ、マックス、家族、そして娘を失った。最後にキャリーに残ったのは、アメリカ、そしていろいろあった親友ソール・ベレンソン。

ソールはブロディやマックスの死に少なからず責任を持つ。彼はアメリカの利益の為にキャリーのかけがえのない友人・それ以上の存在を過去に切り捨ててきた。だがキャリーもアメリカのため、ソールの大事な人々を犠牲にしてきた。この2人はお互いの能力を、人間性を認め合いながらも、国のために冷酷な決断を何度も迫られ、それを実行してきた。常に国を優先する彼らにしかわからない世界だが、それはグロモフやハッカニも同じだろう。生まれた場所が違うだけで、彼らのやっていることは全て「国のため」で、向いている方向は何も変わらない。

このホームランドというドラマは最終的にこれを伝えてきた。人それぞれに正義がある。国には常に敵がいて、その敵は自分たちの国に打撃を与え滅ぼそうと画策している。手段を選んでいたらそれに対抗は出来ない。 そしてそれをやるべき人間たち(スパイ・軍人)がいる。こういう非情な戦いの上に今の平和がある、と。 

これはある意味、シーズン1のブロディにも通じるものがある。ホームランドの紹介文だけを読むと、アルカイダの捕虜となり、アメリカを裏切った男の物語となるが、実際にこのドラマを見れば、そんな物語ではない事はすぐに分かる。ホームランドはアメリカの制作なので、アメリカからの視点で描かれているが、このドラマに善玉と悪玉は存在しない。微妙に善悪はあるが、善も悪も国のため、登場人物は自分の正義のために行動している。

そして最前線に立つ人間は常に厳しい判断を迫られている。今回で言えば、自国の大統領を殺された報復をするべきだが、それをやればアフガニスタンに駐留する米軍基地に核ミサイルが打ち込まれる事になる。報復か?米軍2万人の命か?

アメリカは世界最大の大国として世界のリーダー的な位置にいるが、それはアメリカ国民が善良だからとか、アメリカの政治が極めて優秀だとかいう理由じゃない。アメリカが世界で一目置かれ、どの国も彼らに面と向かって逆らえない理由は唯一つ、アメリカが世界最強の軍隊を持っているからだ。当然アメリカもそれを熟知している。

もしこのストーリーが現実になったとしたら、アメリカはタリバンに即報復、タリバンの拠点を空爆し、おそらくパキスタンの核施設も先制攻撃、さらに大規模な増援を行い、パキスタンに侵攻するだろう。

このホームランドを見終わって、このドラマの素晴らしさを感じたが、同時にアメリカの恐ろしさも改めて思いしった。

シーズン8のお気に入りキャスト

シーズン8の主なキャストは、クレア・デインズ、マンディ・パティンキン、モウリー・スターリング、コスタ・ローニン、ライナス・ローチ、この辺りだと思う。いまさらクレア・デインズやマンディ・パティンキンを語るのもアレなので、個人的に気に入ったキャラを紹介してみる。

ヒュー・ダンシー / ジョン・ゼイベル役

このシーズン8で一番のお気に入りキャストは、今シーズン初登場キャラ「ゼイベル」を演じたヒュー・ダンシーだ。

今回のヒュー・ダンシー、まず個人的に凄い!と感じたのは、最終回までゼイベルを演じていたのが彼だと気が付かなかったことw それはアンタだけだよ、と言われそうな気もするが、クィア・アイで褒め讃えられそうなヘアースタイルとファッションで、嫌われ者の主戦論者を完璧に演じた。確かにヒュー・ダンシーは姑息で嫌味なやつが合いそうな雰囲気はあるが、基本的に善人を演じるタイプだと思う。そして彼はどう見ても主流タイプだ。なので今回のゼイベル役はかなり意表を突かれた。

また見た目だけでなく演技もすごく良かったと思う。ああいうタイプの役というのは俳優の個性が出るので、おそらくやりたい!と希望した俳優は多かったのでは?と思う。いやいやその話ではなく、こういう俳優自身の個性が反映されるような役を、自分自身の個性を出さずに完璧に演じたのがすごい。

いや、あの曲者ゼイベルを完璧に演じたヒュー・ダンシーは、今シーズンを大いに盛り上げたと思う。そういえば昇格大統領役の俳優(サム・トラメル)も無能な小心者を完璧にこなしていた。サム・トラメルは少し前までイケメン枠扱いだったが、どんどんいい役者になっている、今後も期待できると思う。

タチアナ・ムカ / アンナ・ポメランチェワ役

この人の存在と、この人とCIAエージェントのストーリーが今シーズンのハイライトだったと思う。 まあとにかくアンナのストーリーは秀逸だった。彼女が祖国を切り捨てた原因、敵国アメリカに祖国とは別のものを見た理由、そしてベルリン後の人生の全てを捧げた役割。この人の生き方は、自分の希望とはかけ離れたものだったと思うが、彼女はあの事件の後、何の躊躇もなく別の道を選び進んでいく。

おそらくアンナには明確な目的(到達点)があったわけでは無いと思う。ただ許せなかった、そして少しでも正したかった、そんな理由なのだと思う。だがその理由は命をかけ、人生を捧げるのには十分な物。

アンナ、ソール、そしてキャリーが絡むこのストーリーは、とにかく素晴らしかった。最終的にキャリーの取った行動は、一見ソールのため、またはアンナとソールへの謝罪の意味かとも思えた。もちろんそれもあるだろう。 だがあれだけの窮地にあっても、キャリーにはアメリカ(米国民)の利益という唯一無二の目的を見失っていなかった。

それにしても、ザ・イングリッシュティーチャーというタイトルも良かった。アンナと処刑された生徒達のストーリー。鳥肌が立つくらい良い脚本だと思う。

ティム・ギニー / スコット・ライアン役

スコット・ライアンはCIAエージェントで、ソールが最も信頼する男だ。言ってみれば、キャリーとマックスのような間柄。そのスコット・ライアンを演じたのがティム・ギニー。

ティム・ギニーはこのブログで何度か紹介してきたが、いつも書くのは、とても良い俳優、実力者、だ。 彼が演じてきた役で気に入っているのは、グッド・ワイフのアンドリュー・ワイリー。それとレボリューションのベン。レボリューションでは最初の頃だけの登場だけど、主要キャラをうまく演じていた。

スコット・ライアンは控えめなタイプだが、困難な役割を確実にこなすタイプ。今回もアンナのピンチにソールから護衛役を頼まれた。シリーズ序盤から長く活躍した数少ないサブキャラだった。

ダミアン・ルイス / ニコラス・ブロディ

ブロディ役のダミアン・ルイスは、もちろん今シーズンは出演していない。だが最終シーズンに何度も映像が流れたのは、彼のこのドラマへの貢献度を讃えられてのものだろう。

正直言えば、自分の中ではホームランドはブロディの物語で、キャリーののものではないと思っている。どちらかといえば、ブロディに物語を描いた方が面白かっただろうとも思う。というのも、ブロディの場合、家族のストーリーが出来上がっていて、ほとんどの視聴者に受け入れられていたからだ。また、ブロディの妻と親友の関係もわかりやすかった。

反対にキャリーは親権で姉夫婦と争ったりというシーンがあったにも関わらず、その後は姉役の女優がゲスト出演するだけにとどまった。まあ、キャリーの娘は子供すぎるので、親権争いぐらいしかストーリーは作れなかったというのはあるだろうと思う。

それでも、ブロディの妻、子供、親友がどうなったのか?は気になる。シーズン3かな?ブロディの逮捕後、彼の娘がモーテルの掃除係みたいな仕事をしているシーンがあったが、ブロディがテロリストとして逮捕されたことで、彼の家族は崩壊した。家族をブロディの親友、マイクが面倒を見てくれればいいが。さすがに別れたかな? そういえばマイクを演じていたのは、ブラックリストでレスラー捜査官を演じる「ディエゴ・クラテンホフ」。彼もホームランドでスター路線に乗った一人だ。

そういえばこの最終シーズン、ブロディの映像はよく流れたが、このドラマのランドマークとも言えるジャズが少なかった。これも計算なのか?最後のあのシーンでたっぷりジャズが流れるシーンがあったが、計算ならばなかなか効果的だったと思う。

いろいろ思い出すと、もっと見ていたかった気もするが、こうやって完結するところが見られるのは極少数のドラマだけだ。良い結末を見られて幸運だった。 ホームランド全8シーズン完走、間違いなく忘れられないドラマだ。

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